奥さんは家の中で一番大事な宝物

「血は水よりも濃し」ということわざがあるように、血縁関係とは格別なものです。でも、自分の家族を見渡してください。一か所切れたところがあることに気づきませんか?

私と子どもは血がつながっています。妻と子どもも血がつながっています。ところが、夫婦だけは血がつながっていない関係なのです。つまり約束だけで成り立っている関係。にもかかわらず、親や子どもに言えないこと、見せられないことが、夫婦の間ではそれができます。

夫婦というのは、理屈ではなく生の付き合いなのです。ご主人が外でどんなに立派なことを言っても、奥さんは生身のご主人の姿を知っていますし、ご主人も同じです。つまりお互いにすべてをさらけ出し、よいところも悪いところもみんな知り尽くしている。それが夫婦です。

すべてを知っている妻がそのうえで夫を尊敬しているのであれば、夫はひとかどの人物だということになりますね。

江戸時代の人相研究家、水野南北先生が誌された『南北相法極意修身録』という本の中に、こんな言葉が載っています。

「一人の妻だに我心に随がはざれば 天下の人皆我が道に随がはざるなり」

現代語にすると「たった一人の妻さえ自分の心に従ってくれないような人間は、社会に出てもみんな自分に従ってくれない」となります。つまり、たった一人の妻すら言うことを聞いてくれない、という意味です。妻に尊敬されるような人物でこそ、会社でも信頼が篤く、上司や部下も一目置いているということでしょう。ですから、南北先生は、「妻に尊敬されるような男になりなさい。妻もご主人に尊敬されるような女性になりなさい」と諭しておられるのです。

さらに、こんなことも誌されています。

「妻よろしければ物自ら熟して家次第に盛んなるべし」

家庭というものは、奥さん次第で変わる。奥さんが素晴らしければ、家族みんな幸せだというのです。奥さんという存在は、家の中で一番大事な宝物ですから、ご主人は奥さんを大事にしなければなりません。その代わり、奥さんも持てる力を十分発揮し、宝物になりなさいということです。そうすれば、夫婦の絆も自然と生まれてくるでしょう。

もちろん、順風満帆な毎日が続くわけではありません。ときには、波風が起きることもあるでしょう。しかし、いろいろな問題を一緒に解決してこそ、思いが深くなるし、いたわり合うようになるものです。夫婦が互いに尊敬し合えたら、こんな理想的な家庭はありません。

私の知り合いは、ご主人に大変感謝しているのに、面と向かって「ありがとうございます」と言えない。言おうと思ってご主人の顔を見たとたん、何か腹が立ってくる(笑)。そこでこの人は、ご主人が寝静まってから、ご主人の布団の足元に座って手を合わせ、ご主人に聞こえないように、「お父さん、ありがとうございます」と言っているそうです。不思議なもので、この家は何をやってもものごとがうまく運ぶのです。

その話をたまたま横で聞いていた別の夫婦がいて、「そんなにいいことが続くなら、私も」と、奥さんが毎日ご主人が寝てから拝んでみたそうです。かれこれ一年ほど経った頃にその夫婦がやって来て、「何もいいことが起こらない」と私に文句を言うのです。そこで私は「あんたらナァ、それ、計算でやっとるやろう。ただ損得勘定でやっているだけで、心の底から感謝してやってんのと違うやろ(笑)」と申しました。

おとぎ話の「花咲か爺さん」や「雀のお宿」を思い出してごらんなさい。正直爺さんのすることは、損得の計算がない。真心でやっているから、その行いは天に通じ、よいことが起きますが、たいていの話の筋書きには、決まって隣の家に邪な心を持つ爺さんと婆さんがいて、欲得でこれを真似てことごとく失敗することになっています。

これは、目に見えない世界には真心しか通じない、計算は通じないという「宇宙の真理」を、幼い子どもにもわかるようにおとぎ話を通じて伝えているのです。

(『神様にほめられる生き方』 岡本彰夫著 より抜粋)